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日本の竜の神 カムイサウルス・ジャポニクス(通称 むかわ竜(むかわ町穂別産))

 

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カムイサウルス全身化石(HMG-1219)(2019年3月発表)

 

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カムイサウルス生態復元図(提供:服部雅人氏)

 

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カムイサウルス生態復元(遺骸)(提供:服部雅人氏)

 カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)は2019年に新属新種として発表された恐竜です*。全長約8メートルで全身の約8割(体積)が保存されている日本屈指の恐竜化石です。生息していた陸上でなく、海の沖合いの地層から発見されたことも契機となり、一部の恐竜が海岸線近くに生息し、独自の進化をとげたという新しい考えが生み出されたことも評価されています。

 カムイサウルスは、日本産恐竜全身骨格で最大のものです。1934年に南樺太(現ロシア領)で発見されたニッポノサウルスを除くと、骨の断面に見られる成長停止線から年齢が確認された初めての例であり、日本の後期白亜紀で初の恐竜全身骨格、植物食で日本初の恐竜全身骨格、海の地層から日本で初めて発見された恐竜全身骨格として知られます。北海道や日本の宝とも言える標本で、アイヌ語で「神」を意味するカムイ、ラテン語で「トカゲ・竜」を意味するサウルス、そしてラテン語で日本を意味する形容詞の「ジャポニクス」からなる学名(カムイサウルス・ジャポニクス Kamuysaurus japonicus)が命名されました。

 カムイサウルスを所蔵するむかわ町穂別博物館は1982年に開館、1992年にリニューアルしていますが、手狭なので全身復元骨格(レプリカ)や全身の実物化石は展示できません(実物化石は一部が展示されています)。カムイサウルスなどを展示するための新館建設の計画をしていましたが、2018年9月の北海道胆振東部地震の影響で、この計画は保留となっています。カムイサウルスの展示状況につきましては博物館ブログ(http://pomu.town.mukawa.lg.jp/1086.htm)でお確かめください。

*学術論文:小林ほか(2019英)
https://doi.org/10.1038/s41598-019-48607-1

 

カムイサウルスのこれまで

 2003年4月に穂別町在住の堀田良幸氏が散歩の延長でアンモナイトなどが産出する沢沿いを歩いていた際に、崖の中腹で骨化石を発見し、穂別町立博物館(現 むかわ町穂別博物館)に寄贈しました。この骨化石は首長竜の尾椎骨であると判断され、そのクリーニング作業は、他の重要な化石に次ぐものとして後回しにされていました。

2003

発見・寄贈された骨化石入りノジュール

 その後、2010年から首長竜化石としての調査・研究のため、この化石のクリーニング作業が進められました。2011年に、首長竜としての研究をお願いしていた佐藤たまき准教授(東京学芸大学)が、この標本が首長竜ではなく恐竜のものである可能性を指摘しました。 
 そこで、恐竜研究の専門家である小林快次准教授(北海道大学総合博物館)に鑑定をお願いしたところ、恐竜化石であることが確認され、おそらくハドロサウルス科(植物食恐竜)のものだろうとされました。2003年に寄贈された部分は尻尾の中間から後ろにあたる尾椎骨が13個も連結していたものであったので、この恐竜は、死後その場で埋没し、化石になったものだろうと推定されました。恐竜化石が産出した層準は波の影響を受けないほど水深が深い場所であることなどから、尻尾だけでなく全身骨格が埋蔵している可能性も高いことが分かりました。

 

2013
最初に発見された尾椎骨、発見者の堀田氏、小林准教授。2013年7月記者発表会場

 

 この恐竜化石を発掘するために、小林准教授と北海道大学の学生や北海道大学総合博物館のボランティアの方の協力を得て、2013年9月~10月に第一次発掘を、2014年9月に第二次発掘を行いました。第一次発掘では約1 mの右大腿骨(モモの骨)を含め、後肢と尾椎骨の大部分を発掘しました。第二次発掘では100本におよぶ遊離した歯や頭骨の一部を確認しました。第一次・第二次発掘で採集した骨化石入りの岩石は、計6トンに及びました。2015年と2016年には穂別博物館スタッフで補足の発掘調査を行いました。2015年には4点の恐竜化石が得られましたが、2016年にはほとんど発見されなくなったので、恐竜化石は取りつくしたものだと判断しました。

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発掘現場(2013年第一次発掘)(撮影:藤田良治氏 北海道大学総合博物館 助教)

 

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恐竜化石の産状(2013年第一次発掘)

2014
2014年第二次発掘までに採集した恐竜化石の化石分布図。7x4 mの範囲から恐竜の骨入り岩石を採集した。

 

 2013年までは化石のクリーニング作業を進める学芸補助員が1名でしたが、最大4名まで増員し、さらにボランティアスタッフも1名が常駐しクリーニング作業を進めるようになりました。有限会社ゴビサポート・ジャパンや北海道大学総合博物館ボランティアによるクリーニングも続けられ、2018年3月にはすべての骨・歯を岩石から取り出しました。
 2017年4月には全身の5割以上が確認されたと発表し、2018年9月と2019年3月には全身の6割(骨化石の個数)~8割(骨化石の体積)の骨化石が確認されたと発表しました。

 

2017
カムイサウルス全身化石(2017年4月発表)

 

2018
カムイサウルス全身化石(2018年9月発表)

 

 2018年9月6日にカムイサウルス化石標本を収蔵するむかわ町穂別博物館は北海道胆振東部地震(穂別地区で震度6強)の被害を受け、博物館内の資料は落下・破損の被害を受けたものも少なくありませんでした。カムイサウルス化石資料は9月4日に全身化石として並べた後、収蔵庫で片付けている途中段階でしたが、化石を収蔵していた樹脂製コンテナは幸運にも転倒せず、被害が無く済みました。

 

2019
北海道胆振東部地震被害。穂別博物館収蔵庫。キャビネット型の収蔵棚(写真左下)は転倒したが、カムイサウルスを収蔵していた樹脂性コンテナ(写真右。灰色)は転倒しなかった。

 

 カムイサウルスの全身復元模型(レプリカ)は、有限会社ゴビサポート・ジャパンによって約2年間の期間をかけて製作されました。2019年6月にむかわ町で一般公開されたほか、2019年7月から10月に恐竜博2019(国立科学博物館 上野本館)で公開されました。 

 2019
恐竜博2019で展示されたカムイサウルス全身骨格(化石、手前)と全身復元模型(奥、レプリカ)

 カムイサウルスは発見直後から穂別町立博物館(2006年-むかわ町穂別博物館)の収蔵資料番号HMG-1219という番号を付けられていましたが、一般的な名称は無い状態でした。2016年12月に通称として「むかわ竜」と命名されました。2019年9月に学術論文が出版され正式な学名であるカムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)と命名されました。
(役職などは当時のもの)