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 公益社団法人 北海道栽培漁業振興公社

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 シシャモの繁殖のほとんどは11月に行われ、受精卵は河床材料(砂や礫)に付着しながら冬期の冷たい水のなかで発生(細胞分裂など成長すること)を続け、翌年の4月頃にふ化します(文献1)。我が国の淡水魚において、冬期に繁殖して春期にふ化する魚はシシャモが唯一です。ふ化直後の仔魚(しぎょ)は、透明であり、体長は約8mm 程度です(写真1)。この段階では、遊泳力はなく、川の流れに身を任せて海へ下ります。
 海へ下ることを降海(こうかい)といい、降海の時期、尾数を確認するための調査を次のような方法で行っております。

①仔魚の採集地点を決めて、そこへ調査船や徒歩により向かいます。

②仔魚は、プランクトン(浮遊生物)採集ネットを仔魚用に改良したネット(口径45 cm、全長180 cm、網目約0.3mm;図1)を用いて採集します。そのネットにアンカー、ロープ、浮きを取り付け、河岸の流水域へ設置します。また、ネットには、水量当たりの尾数を評価するために、ネット内に流れ込んだ水の量を計測するフローメーターも装着します。

③採集試料は、ビニール袋に入れて実験室に持ち帰り、他の大量の流下物から仔魚を探し出します。持ち帰るときは、仔魚が腐らないように薬剤を用います。

④地点ごとに仔魚を数えます。

 このような調査を毎年継続し、年別の仔魚数、降海時期とピーク、降海時の河川条件等の変化を確認しております。ここで、鵡川における平均仔魚採捕数(1 ㎥ 当たり)の経年変化(文献2)をご紹介します(図2)。仔魚数は、増減を繰り返しながら推移しており、令和4年に最も高くなりましたが、その後は最低水準が続いております。その経年変化は産着卵数と関係性が弱いです。これは、越冬中に受精卵は、結氷や水温、流量等の影響を受けますが、その影響度合いが年によって大きく異なるため、産着卵数が多くても仔魚は必ずしも多くならないことがあるためと考えます。なお、仔魚数は令和4年に多かったにも拘わらず、その後の漁獲量が増えなかった要因としては、近年の海水温の上昇が沿岸域で成育する稚魚へ悪影響を及ぼしたことが一因であると考えられております(文献3)。また、これまでの鵡川での調査結果から、各調査年における降海ピーク時の平均水温は7.6℃(H23-R06;文献2)、日平均流量(川の水が流れる体積;R1-6:文献2)は、1秒当たり約122 ㎥ ということがわかりました。
 今後は、休漁等の資源保護に伴う効果や卵の越冬場所の河川環境保全に、各調査結果を役立てたいと考えております。

 

(文献)

1) 新居久也(2006) シシャモの産卵に及ぼす河川物理環境の影響に関する研究,北海道大学博士論文,160 P.

 

2) 公益社団法人 北海道栽培漁業振興公社(2024) 鵡川沙流川遡河魚類生息環境調査検討業務報告書,

  北海道開発局室蘭開発建設部.

 

3) 栽培水産試験場(2022) 令和4年度栽培水産試験場事業報告書.

 

図表

【写真1】

シシャモ仔魚

 

【図1】

シシャモ仔魚採捕用のプランクトンネット

 

 

 

【図2】

鵡川における仔魚採捕数の経年変化(1㎥当たりの尾数)

 

町広報誌への掲載

 ・むかわ町広報誌2025年12月号(PDF 2412KB)

 ・むかわ町広報誌2026年1月号(PDF 2519KB)