穂別地域からは約1億年前から7,000万年前のものが産出しています。

ホベツアラキリュウ(ホッピー)

hoppy
ホベツアラキリュウ(ホッピー)全身復元模型

爬虫綱(はちゅう こう)鰭竜目(きりゅう もく)長頸竜亜目(ちょうけいりゅう あもく)プレシオサウルス上科 エラスモサウルス科 (属種不明)
愛称ホベツアラキリュウ(ホッピー)
Elasmosauridae gen. et sp. indet.
白亜紀後期 カンパニアン期前期(約8,000万年前)
むかわ町穂別長和(おさわ)産
1975年発見、1977年発掘
北海道指定天然記念物第34号 平成29年9月29日指定
(旧)穂別町指定天然記念物(指定文化財第2号)、むかわ町指定天然記念物(指定文化財第3号)昭和54年3月5日指定

 胴体の大部分と前後のヒレなどが採集されました。日本国内で首長竜のまとまった骨格としては、1968年に福島県で発見されたフタバスズキリュウに次いで発見された標本です。全長は8 mです。

Hoppyandothers
ホベツアラキリュウと同時代の生き物
イラスト:服部雅人 

モササウルス類 ティロサウルス

ティロサウルス
生体復元模型

ティロサウルス上顎
ティロサウルス上顎骨

ティロサウルス下顎
ティロサウルス下顎骨
爬虫綱 有鱗目(ゆうりん もく)モササウルス科 ティロサウルス亜科
ティロサウルス属(未定種)
Tylosaurus sp.
白亜紀後期 カンパニアン期前期(約8,000万年前)(転石)
むかわ町穂別長和産
1985年発見、寄贈
むかわ町指定天然記念物(指定文化財第8号)平成29年4月1日指定
 
 モササウルスは、中生代白亜紀後期に繁栄した海生爬虫類の一グループで、現在のヘビやトカゲを含む有鱗目に含まれます。
 長和産ティロサウルスは、頭部の複数の部分が化石となって産出した標本です。復元模型(全長6 m)は、産出した化石の大きさに合わせて制作されています。

モササウルス類 モササウルス・ホベツエンシス(新種)

モササウルス・ホベツエンシスヒレ
モササウルス・ホベツエンシス右前ヒレ(ホロタイプ)
 
モササウルス・ホベツエンシス 胴
モササウルス・ホベツエンシス胴体部分(ホロタイプ)

爬虫綱 有鱗目 モササウルス科 モササウルス亜科
モササウルス・ホベツエンシス(新種)
Mosasaurus hobetsuensis Suzuki, 1985
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)
むかわ町穂別平丘産
1982年発見、採集(当時の学芸員)
むかわ町指定天然記念物(指定文化財第5号)平成29年4月1日指定

 胴体部分、右前ヒレなど1個体の複数の部分が産している日本国内では稀な標本です。日本産モササウルス類としては、ヒレや胴体部分が連結して発見された初めての標本で、日本産モササウルスとしては初めて新種に指定されました(1985年発表)。推定全長は約5.5 mです。

モササウルス類 モササウルス・プリズマティクス(新種)

プリズマティクス
モササウルス・プリズマティクス 頭骨の一部(ホロタイプ)

爬虫綱 有鱗目 モササウルス科 モササウルス亜科
モササウルス・プリズマティクス(新種)
Mosasaurus prismaticus Sakurai et al., 1999
白亜紀末 カンパニアン期~マーストリヒチアン期の間(約8,300万~6,600万年前)
むかわ町穂別キウス産
1982年発見、採集(当時の学芸員・学芸補助員)
むかわ町指定天然記念物(指定文化財第9号)平成29年4月1日指定

 歯の断面形状がプリズム状であったことから新種に指定されたモササウルスです。

モササウルス類 フォスフォロサウルス・ポンペテレガンス(新種)

Phosphorosaurus_ponpetelegans
フォスフォロサウルス・ポンペテレガンス(ホロタイプ)

Replica_of_Phosphorosaurus_ponpetelegans
レプリカから復元したフォスフォロサウルス・ポンペテレガンスの頭骨(下あごを除く)

phosphorosaurus
フォスフォロサウルス・ポンペテレガンスの生体復元図。©イラスト:新村龍也・足寄動物化石博物館

Phosphorosaurus

フォスフォロサウルス・ポンペテレガンスの全身復元模型

爬虫綱 有鱗目 モササウルス科 ハリサウルス亜科
フォスフォロサウルス・ポンペテレガンス(新種)
Phosphorosaurus ponpetelegans Konishi et al., 2016
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)
むかわ町穂別平丘産
2009年採集、寄贈
むかわ町指定天然記念物(指定文化財第4号)平成29年4月1日指定

 日本産モササウルス類としては4番目に新種として記載されました。新種名(種小名)のポンペテレガンスの由来は、アイヌ語で「小川・清流の-」という意味で、穂別の語源でもある「ポンペット(ponpet-)」、および標本の保存状態がすばらしい・産地の清流が美しいという意味を込めたラテン語の「エレガンス(elegans)」を組み合わせた造語です。
 日本および北西太平洋ではじめて発見されたハリサウルス亜科モササウルス類で、このグループがこの地域まで分布域を広げていたことを示す重要な証拠・資料です。
 この標本は頭骨、頚椎、肋骨が保存されていました。その中で頭骨は約8割が保存されており、またそれらが変形を受けていない保存状態の良いものであることから、世界でも屈指のモササウルス類化石とされています。頭骨はバラバラに産出しましたが、それらのレプリカを接合し、生きていたときと同じ状態に復元することができました。
 この頭骨から、この種類はモササウルス類としてはじめて立体視ができる両眼視(両目の視野が重なり、前方のものを立体として把握できること。)であることが明らかになりました。つまり、すぐ目の前の獲物の位置を正確に把握できる能力をもっていたことが分かりました。
 こうした生態と、同時代に生息する大型モササウルス類(モササウルス・ホベツエンシス)の存在から、夜行性であったと推測されています。
       

ウミガメ メソダーモケリス・ウンデュラータス(新属新種)

メソダーモケリス
メソダーモケリス復元模型

爬虫綱 カメ目 ウミガメ上科 オサガメ科
メソダーモケリス・ウンデュラータス(新属新種)
Mesodermochelys undulatus Hirayama and Chitoku, 1996
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)ほか
むかわ町穂別稲里産(ホロタイプ)
1980年採集・寄贈(ホロタイプ)
むかわ町指定天然記念物(ホロタイプのHMG-5のみ)(指定文化財第6号)平成29年4月1日指定

 ホロタイプは頭骨や指骨をのぞく大部分が産出しています。他にも穂別地域を中心に多数の標本が産出していて、ほぼ全身の骨格が明らかになっています。ホロタイプを復元すると(写真の全身復元模型)、全長が1 mほどになります。その他にホロタイプの2倍ほどの標本が発見されています。世界的にも発見例の少ない白亜紀のオサガメ類として、1996年に新属新種メソダーモケリス・ウンデュラータスとして記載されました。現在は中川町や淡路島からも産出が確認さ れています。これまでに産出したメソダーモケリス・ウンデュラータスの約8割以上にあたる約30個体が穂別地域から産出しています。

陸生カメ アノマロケリス・アングラータ(新属新種)

アノマロケリス
アノマロケリス背甲(ホロタイプ)
爬虫綱 カメ目 スッポン上科 ナンシュンケリス科
アノマロケリス・アングラータ(新属新種)
Anomalochelys anglata Hirayama et al., 2001
白亜紀後期 セノマニアン期(約1億から9,000万年前)
むかわ町穂別富内産
1977年採集、1991年寄贈
むかわ町指定天然記念物(指定文化財第7号)平成29年4月1日指定

 背甲の大部分が産出しています。背甲の前端部が角のようになっていることが特徴で、2001年に新属新種のアノマロケリス・アングラータとして記載されました。生息していた陸からかなり離れた海成層から産出しました。全長は約1 mです。日本産ナンシュンケリス科として初めて発見された標本で、最も完全な標本です。

カムイサウルス・ジャポニクス(新属新種)(通称 むかわ竜)

尾椎骨
2003年に寄贈された尾椎骨(尾の後半部)

2019
カムイサウルス全身骨格(ホロタイプ)(全身骨格の一部のみが展示されています。)

 

2019

産出が確認されている部位(白色)。提供:増川玄哉氏

 

爬虫綱恐竜上目(きょうりゅうじょうもく)鳥盤目(ちょうばんもく)鳥脚亜目(ちょうきゃくあもく)ハドロサウルス科
カムイサウルス・ジャポニクス(新属新種)
Kamuysaurus japonicus Kobayashi et al., 2019
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)
むかわ町穂別産
2003年採集・寄贈(尾椎骨)、主に2013・2014年発掘

 2003年に尻尾の中間から後ろの尾椎骨(びついこつ)が発見・寄贈されました。海成層から産したこともあり、当初は首長竜のものと思われていましたが、2010年から化石周辺の岩石を取り除くクリーニング作業を進めた結果、恐竜のものであることが判明しました。2013年と2014年に大規模な発掘作業を行い、全長8mの全身の大部分を採集しました。
2018年9月に全身の6割(骨の個数)~8割(骨の体積)が確認され、2019年9月に新属新種として記載されました。
(化石は一部のみが展示されています。)

Kamuysaurus

カムイサウルスの展示(2020年3月)

頭骨レプリカと実物の化石(尾椎骨・左大腿骨)を展示しています。

KamuysaurusReplica

全身復元骨格(レプリカ)を特別展示室で展示しています(2021年4月から)。企画展の開催状況によっては、展示を下げることもありますので、ご了承ください。

 

 

大型アンモナイト(パキデスモセラスほか)

大型アンモナイト
大型アンモナイト(手前がパキデスモセラス)

 
軟体動物門(なんたいどうぶつ もん)頭足綱(とうそく こう)アンモナイト亜綱アンモナイト亜目
パキデスモセラス・パキディスコイデほか
Pachydesmoceras pachydiscoide et al.
白亜紀後期 チューロニアン期(約9,000万年前)ほか

 アンモナイトはイカ・タコ・オウムガイを含む頭足綱の1グループで、外殻が化石としてよく発見されます。北海道の白亜紀後期の地層からは大型のものを含む保存状態の良いアンモナイトが産することで有名です。穂別からも産するパキデスモセラスは日本で最も大きくなるアンモナイト(最大直径約1.3m)として有名で、穂別博物館には直径1mの標本が展示されています。

アンモナイト ゴードリセラス・ホベツエンゼ(新種)

ゴードリセラス・ホベツエンゼ
ゴードリセラス・ホベツエンゼ(ホロタイプ)

軟体動物門 頭足綱 アンモナイト亜綱 リトセラス亜目
ゴードリセラス・ホベツエンゼ(新種)
Gaudryceras hobetsense Shigeta and Nishimura, 2013
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)
むかわ町穂別富内産ほか
1994年採集、2012年寄贈(ホロタイプ)

 穂別地域とその周辺の白亜紀末の地層から産した標本を基に新種として2013年に発表されました。北西太平洋地域の白亜紀末マーストリヒチアン期最前期の地層の時代対比に有用な示準化石です。

アンモナイト アナゴードリセラス・コンプレッサム(新種)

アナゴードリセラス・コンプレッサム
アナゴードリセラス・コンプレッサム(ホロタイプ)

軟体動物門 頭足綱 アンモナイト亜綱 リトセラス亜目
アナゴードリセラス・コンプレッサム(新種)
Anagaudryceras compressum Shigeta and Nishimura, 2013
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)
むかわ町穂別稲里産ほか
1980年採集(旧穂別町職員)(ホロタイプ)

 アナゴードリセラス属アンモナイトのうち,その殻が最もスレンダー(螺管幅が薄い)であることが特徴の種類で、2014年に新種として発表されました。穂別地域各地から産出しています。

アンモナイト フィロプチコセラス・ホリタイ(新種)

フィロプチコセラス・ホリタイ
フィロプチコセラス・ホリタイ(ホロタイプ、パラタイプ)
軟体動物門 頭足綱 アンモナイト亜綱 アンキロセラス亜目
フィロプチコセラス・ホリタイ(新種)
Phylloptychoceras horitai Shigeta and Nishimura, 2013
白亜紀末 マーストリヒチアン期前期(約7,200万年前)
平取町長知内
2008年採集、2011年寄贈

 日本および北西太平洋地域ではじめて産したフィロプチコセラス属アンモナイトで、2013年に新種として発表されました。フィロプチコセラス属アンモナイトが北太平洋地域起源であることを示す重要な標本です。

イノセラムス、いのせらたん

イノセラムス

いのせらたん・イノセラムス

イノセラムス(奥、化石)とほべつたん(いのせらたんの1種、手前、ぬいぐるみ)

軟体動物門 二枚貝綱(にまいがい こう) 翼形亜綱(よくけい あこう) ウグイスガイ目 イノセラムス科
イノセラムス・ホベツエンシス ほか
Inoceramus hobetsensis et al.
むかわ町穂別地域各地
白亜紀後期 チューロニアン期(約9,000万年前)ほか
 イノセラムスは主に白亜紀後期(約1億年前以降)に大繁栄した二枚貝です。一部の種類が大型になります。
イノセラムス・ホベツエンシスは日本産イノセラムスで最大になる種類(殻高約60 cm)で、白亜紀の日本周辺から産する二枚貝化石および,北海道産現生・化石二枚貝で最大のものです。巨大化した原因については現在も不明です。

ほべつたん ほか いのせらたん
Hobetsu-tan et al., Inocera-tan
 いのせらたんは日本産イノセラムス科二枚貝各種をモチーフとしたキャラクターで、古生物学者などを中心に周知されています。販売されているストラップの分布域は北米や中国にまで広がっています。