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公益社団法人 北海道栽培漁業振興公社
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シシャモの繁殖のほとんどは11月に行われ、受精卵は河床材料に付着しながら冬期の冷たい水のなかで発生(細胞分裂など成長すること)を続け、翌年の4月頃にふ化します。ふ化した仔魚は、海へ下り、6~7月に沿岸域で稚魚(ちぎょ)まで成長します(文献1)。
稚魚は、6月下旬には体長が24 mm 程度(H19-R06の平均値;文献2)となり、体は半透明で鱗(うろこ)が生えそろっていない状態です(写真1)。この段階で遊泳力は備わっており、最新の実験結果では、臨界遊泳速度(りんかいゆうえいそくど;尾ひれを振り続けながら遊泳できる速度の最大値)が毎秒3.9 cm (体長30 mm、水温20℃の条件)であることが解明されました(牧口・岡田ら、未発表データ;日本大学・栽培水産試験場)。
しかし沿岸域における稚魚の生態は、未解明なことが多く、正確な生息域や遊泳行動はわかっていないのが現状です。本公社では、生態の基礎である年別の生息密度、成長を確認するための調査を次のような方法で行っております。
①稚魚の採集地点を決めて、そこへ調査船により向かいます。
②稚魚はソリネット(口径;長さ150 cm、高さ30 cm、全長500 cm、網目3 mm;写真2)という調査用の小型底曳き網(こがたそこびきあみ)を用いて採集します。そのネットは、調査船から海底へ投入し、数分間あるいは数百メートルを引っ張ります。
③採集試料は、ビニール袋に入れて実験室に持ち帰り、他の大量の混入物から稚魚を探し出します。持ち帰るときは、稚魚が腐らないように薬剤を用います。
④地点ごとに稚魚を数えます。
このような調査を毎年継続し、年別の稚魚数や生息密度が高い時期の海域条件等の変化を確認しております。ここで、鵡川河口周辺海域における平均稚魚数(100 m2当たり;文献2)の経年変化をご紹介します(図1)。平均稚魚数は、平成22年に最も多くなりましたが、その後、増減を繰り返し、近年では令和4年から少ない状態が続いております。また、これまでの調査結果から、各調査年における高密度時期の平均海底水温は11℃前後(H19-R06の平均値;文献2)であり、その後、水温が上昇すると水平移動が生じ、河口周辺海域での密度が低下するということがわかりました。
今後は、休漁等の資源保護に伴う効果や生息域となる沿岸環境保全に、各調査結果を役立てたいと考えております。
(文献)
1) 新居久也(2006) シシャモの産卵に及ぼす河川物理環境の影響に関する研究,北海道大学博士論文,160 P.
2) 公益社団法人 北海道栽培漁業振興公社(2024) 鵡川沙流川遡河魚類生息環境調査検討業務報告書,北海道開発局室蘭開発建設部.
図表
【写真1】

【写真2】

【図1】

町広報誌への掲載
・むかわ町広報誌4月号(掲載予定)
・むかわ町広報誌5月号(掲載予定)